レポート

2019.03.04

若手陶芸家を輩出する岐阜の伝統工芸、美濃焼。東濃信金と連携し産業の発展に取り組む

日本の中心に位置する岐阜県には、古くから観光地として栄える飛騨高山など魅力的なスポットが点在しています。青々とした自然が残り、古風な建物や風習が色濃く残る山間部には毎年多くの外国人観光客も訪れ、日本の古き良き文化の風を受け取ることができます。

そんな岐阜県は、大きく二つの地域に分けることができます。飛騨地域と美濃地域です。今回は、美濃地域に古来から伝わる伝統的な産業のひとつであり、国内の食器類シェア60%を誇る陶磁器ブランド、「美濃焼」の発展に取り組む若手陶芸家と東濃信用金庫の取り組みについてご紹介します。

1300年の歴史を受け継ぐ美濃焼

美濃焼は1978年に伝統工芸品として認定を受けた陶磁器の一種です。

その歴史は古く、1300年以上前から存在していたと言われています。現在では多治見市・土岐市・瑞浪市を中心に窯元が点在しており、この三つの市を拠点として美濃焼の文化が守られています。

美濃焼の特徴はその自由さにあります。その時代、その時代のトレンドにあわせた作品を生み出すことで、1300年の歴史の中でも埋もれることなく人々に愛される陶磁器が誕生してきました。現在の窯元の雰囲気にも、みんなで文化を守っていこう、という風通しの良さが現れています。

美濃焼の歴史を語るうえで外せないのが、「織部好み」という製造手法です。これは戦国時代の武将、茶人である古田織部という人物が大成させたもの。織部好みを利用した美濃焼を「織部焼」といいます。

この織部焼は陶磁器のみならず、建築などの他分野にも大きな影響を与えたとされています。当時、織部焼は好評を博し、江戸時代には美濃で焼かれた織部焼が京都へ運搬され、京都の街で売られていました。

美濃焼の新たな価値を創造する現代作家の姿

画像出典:「ミノヤキセンパイ公式サイトから

古くから多くの陶芸家を輩出してきた美濃焼ですが、美濃焼の風通しの良さも手伝ってか、現代においても若い陶芸家が数多く存在しています。その中でも目を引く陶芸家が、ミノヤキセンパイ」。

なんともキャッチーな名前ですが、構成員は全員若手の陶芸家グループです。美濃焼陶芸家4人が結成し、陶芸や美濃焼に興味がない方でも親しみをもって美濃焼と関われるように、という思いから結成に踏み切ったそうです。

また彼らは、陶芸作家を目指す方は多いけれど、なかなか生計を立てられない現状を打破したい、という願いも込めて、新たな形で美濃焼の魅力をプロモーションしています。実際にろくろを回しながら陶磁器を制作していく姿を実演するワークショップを開くなど、これまでは想像もできなかった形で美濃焼の魅力を伝えています。

若い世代の感覚を持って、これまでとは確度を変えて美濃焼と向き合い、そこから見えてくる新しい美濃焼の姿を広めています。こうした人材が文化を閉じるのではなく、広げていこうという意識で取り組むことで、美濃焼の未来を明るく照らす光源となるのではないでしょうか。

東濃信用金庫が連携し生産者への支援を実施

実は、美濃焼については職人が不足しているということはありません、むしろ、美濃焼の陶芸家になりたいという方が飽和している状況にあります。しかし、先述したように美濃焼の製造だけでは生計を立てられないという理由から、美濃焼の生産者(窯元)が継続的な生産能力を持つためには外部的な支援が急務です。

そこで、状況を打破するために、美濃焼の生産者との連携を図っているのが地元の金融機関である東濃信用金庫です。同信金は2012年頃から積極的に、伝統継承産業振興地域振興シンクタンク機能を地域にもたらすことを目指した取り組みを始めました。

例えば美濃焼の伝統を継承する取り組みのひとつとして、現代陶芸展「REVALUE NIPPON PROJECT」などといったイベントを開催。REVALUE NIPPON PROFECTは、元サッカー日本代表の中田英寿さんが代表理事を務める「TAKE ACTION FOUNDATION」が立ち上げた、日本の伝統文化などの隠れた魅力にスポットライトを当てるプロジェクトです。東濃信用金庫は、このREVALUE NIPPON PROJECTの共催として携わっています。

また産業振興という視点から、東濃信用金庫は「美濃焼ブランディング研究会」へ参画。産地と連携し、美濃焼のブランド価値をさらに向上させるべく、地域の窯元と協力しながら産業を盛り上げようという企画が立ち上げられています。さらには、地域振興の一環として毎年10月に多治見駅周辺で行われる一大イベント「美濃焼祭」の企画、運営も行っています。窯元ごとに美濃焼の直売を行ったり、美濃焼の制作を体験できるなど、普段美濃焼に触れる機会の少ない方にも楽しんでもらえる内容が盛りだくさんです。

さらに同信金は、シンクタンク機能をもたらすために「美濃焼タイル産地の現状と今後の方向性」と題したレポートを作成し、勉強会を開催しています。こうした取り組みによって、業界関係者との信頼関係が強固になり、地域が一丸となって産業を盛り上げようという意識が醸成され、新商品や試作品の展示を行う機会にも繋がり、美濃焼のPRを期待できます。地域の産業が活性化されれば経済的にも好循環が生まれ、若手の陶芸家の発展にも繋がるでしょう。

美濃焼が伝統工芸の新たな可能性を拓く

今回は、美濃焼という伝統産業の普及への取り組みを紹介しました。しかし、伝統工芸品は現代の人々にはなかなか馴染みが浅く、窯元などの生産者の努力だけでは、伝統工芸を守りきることは難しくなってきています。

そこで、先述した若手陶芸家の「ミノヤキセンパイ」のように、伝統工芸としてのイメージに囚われず、現代の雰囲気にうまく調和する形で美濃焼の魅力を引き出せる窯元が必要なのです。そして、そうした窯元が事業を発展していける土台作りを、地域の金融機関が一体となってサポートしてくれる環境は大変心強いものです。

美濃焼の生産者と東濃信用金庫の取り組みは、伝統工芸に携わる関係者も注目を集めています。こうした連携が、ゆくゆくは日本の伝統工芸の未来を照らすときっかけとなるのではないでしょうか。

 

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